PL学園―高知商(78年決勝)

1.1

1.2.jpg
高知商(高知)  002 000 000|2
PL学園(大阪) 000 000 003|3

■PL学園が初優勝 高知商に逆転サヨナラ

 参加三千七十四校。かつてないすそ野の広がりを見せた第六十回高校野球選手権記念大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)の決勝戦は二十日、阪神甲子園球場で行われ、大阪代表・PL学園が、前日の準決勝に続いて奇跡ともいえる逆転サヨナラ勝ちで3−2と高知代表・高知商を下し、初めて栄冠を獲得した。

■柳川、左中間を真っ二つ 西田、歓喜のホームイン

 二試合も続けて九回裏に、こんなドラマが起こると、だれが予想できたか。

 三回に2点を先行され、PL学園は高知商の森に「ゼロ」を重ねた。ベンチで鶴岡監督はナインに何度もどなった。「1点がどうして取れんのや。きのうのようなことは二度と起こらんぞ」

 だが、奇跡はまた起こったのである。今大会、前日まで10打数1安打の中村が突破口の中前打。幕開けにはまず意外性があった。

 森の顔が青ざめる。谷松に対して腕が絡みストライクが入らない。二宮主将がベンチから伝令に走った。リードを背負った投手は、九回裏になると、気持ちが攻めから守りに変わるといわれる。高知商ベンチはそれを心配して「これで終わると思うな。延長戦をやるつもりでいけ」とこの回、森を送り出していたが、投げる本人には無理な注文だったかも知れない。

 谷松ストレートの四球、渡辺のバントに森は立ちすくんだ。一塁手の松浦が拾って危うくアウトにしたが、この硬い動きにも森の不安は良く表れていた。前日、PL学園九回裏の逆襲に、中京の武藤投手は「代えて欲しい」とベンチを何度もうかがったが、森の心理も同じようなものだったろう。

 木戸の中犠飛で1点差としたあと、打席に入った西田は、森の弱気を読んでいた。「二年生でしょう。経験不足で硬くなってましたね」。1―1から西田は、とんでもない高いボールに手を出し空振りした。「何でもいいから、一つ思い切り振ってやろう」と、ヤマを張っての失敗だったが、不安いっぱいの森は、この強振に恐怖を感じたかもしれない。4球目は内角カーブ。森は「狙ったところへいった。失投とは思わない」といったが、西田にいわせると「左打者にあのカーブはボクもよく打たれる球」。これが同点の二塁打。

 このあと柳川の打球が左中間を真っ二つに割って、西田が両手をあげ本塁へ。森は柳川の一打を何か信じられないものを見るように、ぼう然と見送っていたが、マウンドを二歩、三歩降りると、しゃがみ込んでしまった。勝者から一気に敗者へ。残酷な場面だった。

 西田は四回、三直を打ったとき、球につまって左手の親指を痛めた。「気の強い子」(鶴岡監督)で、西田にはこの試合、明らかに気負いがあり、三回の失点は多分に力みが災いとなっていた。だが、親指を痛めたことで、投球を「打たせてとる」方向に変えた。これが高知商の追加点を阻むことになったのだから、野球は面白い。

 PL学園はこの試合、ジャンケンに勝って「後攻」をとった。木戸が“グー”で高知商の二宮は“チョキ”。鶴岡監督は「きのうの九回裏を考えて後攻をとらせたのではない」と苦笑したが、あとになってみると何もかもが「九回裏」のおぜん立てになっている。高知商はやはり運がなかった。

■優劣つけ難い両チーム

 八回まで3安打の散発に抑えられていたPL学園が、九回の土壇場で逆転。信じられないようなフィナーレになった。

高知商の森は、速球とカーブのコンディションがよく、PL学園・西田よりいい投球をしていた。球に勢いがあるし、カーブは両サイドをよぎる。さすがのPL打線もねらい球がしぼれず、森のペースにはまっていた。ところが、九回になって、中村に中前打され、急にピッチングがおかしくなった。

 谷松に四球、渡辺のバント、木戸の中犠飛と1点差に追い上げられ二死二塁。まだここまでは、高知商の勝利も可能性を十分秘めていた。西田を迎えて2―1と追い込み、四球目の内角カーブを、西田が力いっぱい引っ張った。球は一塁線を破る二塁打で同点。それまで三打席とも抑えている森にしてみれば、敬遠策も必要ではなかったかも知れない。ただ、勝負球は外角攻めの方がよかったように思う。悔いの残る一球であった。

 PL学園は勝ったが反省する点もあった。たとえば左投手の攻略法だ。左打者が四人という不利があるにしても、もっとドラッグバントを試みるとか、ヒット・エンド・ランでかき回すとかすれば、こんなに苦しまなくてすんだだろう。だが、準決勝の中京戦で4点をはね返した経験が自信になり、心の支えになっていた。勝負に対する執念は立派なものである。

 敗れはしたが、高知商もよくがんばった。三回の青木悟の巧打や、明神のすばらしい打撃。それに内野陣がよく鍛えられていることである。腰を低くしてすり足で打球の処理をする。一戦一戦うまくなったような気がする。勝利はPL学園のものになったが、力の差は優劣つけがたい。いずれにしても、決勝にふさわしい力の入った好ゲームで、六十回の年輪を象徴するような大一番であった。
| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。