池田―PL学園(83年準決勝)

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83年 第65回高校野球記念大会 PL学園の桑田真澄投手


池田(徳島)   000 000 000|0

PL学園(大阪) 041 100 10X|7

■PL猛打 池田を砕く

 第六十五回全国高校野球選手権記念大会(朝日新聞社、日本高野連主催)は二十日、準決勝を迎えていよいよ佳境に。好カードとあって、観衆は五万八千人。午前十一時、第一試合の池田(徳島)―PL学園(大阪)戦がプレーボール。PLは二回、桑田、住田の連続本塁打などで大量4点を加えた。連続本塁打は大会史上五度目。PLは四回にも小島が二試合連続の大会29号左翼本塁打で1点を追加。その後もPLは水野を攻め立てて加点。池田は看板打線が一年生投手桑田の力投に封じられて完敗した。一時間二十五分のドラマはあっけなく終わった。第二試合は久留米商(福岡)―横浜商(神奈川)戦。

■3本塁打7点奪う 桑田、豪打線ピシャリ

 波に乗るPL打線が、池田のお株を奪う、すさまじい爆発力を発揮した。二回一死から朝山が四球、山中は三振したが、小島が2―2から池田・水野の外角寄り低めの速球を右中間二塁打して、まず1点を取った。勝負球を打たれた水野の表情が変わる。続く桑田は、それを見すかしたように2―0から内角高め直球を左翼席へ痛烈な本塁打。さらに住田も2―0から、水野がむきになって投げ込んできたスライダーを左翼ラッキーゾーンへ打ち込んで、一気に4点を先取した。

 水野の立ち上がりは悪くなかった。いや、むしろ直球が走り、簡単に池部を三振、神野、加藤を投ゴロに仕留めたように、これまでの最高のスタートを切ったとさえいえる。

 しかし、投手は快調なときほど、乗りすぎるため用心しなくてはならない。水野は二回も直球を主体に、速いテンポで投げた。ところが、この投球内容とテンポが、直球に的を絞り、リズムに乗っているPL下位打線と、ピッタリ合った。そして、気の強い水野の性格が、さらに拍車をかけたといえよう。

 PL学園の勝因は、二回のほか四回の小島の本塁打、七回の神野の二塁打に見るように、長打力にあった。同時に相手投手を押しつぶす強打の池田を、わずか5安打に抑えた一年生投手・桑田の多彩な投球と、彼をもり立てたバックスの好守の勝利でもあった。

 池田は、この試合で心配されていたアキレスけんを見せた。攻めては緩いカーブにタイミングが合わなかったこと。守っては捕球ミスなどが出たことで、これが意外な大量失点の一因でもあった。(柴橋)

■ボール判定で投球が一変 池田・水野投手

 水野がマウンド上で首をかしげるのを、初めて見た。腰にあてがった両手がけだるそうだ。打者をにらみすえる、いつもの眼光も薄らいでいる。公式戦では初体験の被本塁打を、いっぺんに三本。しかも許した相手が七、八、九番打者という皮肉な結果だった。

 水野は「ストーリー」という言葉が好きだ。一回から九回まで、相手打者をどううち取っていくかをあらかじめ頭に描くのだ。途中、投球が乱れてピンチを招く、あるいは点を奪われる、といった光景すら思い浮かべるという。自らへの絶対の自信と投球術があるからこそできる芸当といえる。その「水野流」も、二回もマウンドでは計算が外れてしまった。

 この回、朝山の四球をはさんで清原と山中をともに三振に。そのあと小島の二塁打、桑田と住田の二者連続本塁打が出るわけだが、試合の流れを変えたのは小島が右中間を破る直前の四球目。2―1から外角低めへのスライダーだった。微妙なコースで、球審の手が上がりかけたほどだったが、判定はボール。水野の顔色がサッと変わった。

 そのショックが尾を引いた、のだろう。次の一球を小島に先制打にされると、水野は自分を見失っていく。桑田に打たれたのはやや内角寄りの高めストレート、住田には真ん中へ入って来るスライダー。共通していたのは、ボールカウント2―0からムキになって投げた球、ということだ。桑田へは高め遊び球のつもりだったらしい。それがストライクゾーンいっぱいに入った。「それも打たれるとは……」と水野は肩を落とし、住田へは「外角を狙ったんだが……」と、ぼう然。

 蔦監督は最近、「この子らの人生のためには、負けた方がいい。それも、水野が打たれる形で……」ともらしたことがある。生徒たちの「おごり」を心配しての言葉だったろう。水野にとっては、池田のユニホームを着て初めて味わう挫折であった。
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