池田―広島商(82年決勝)

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池田(徳島)  600 015 000|12

広島商(広島)001 001 000|2

■池田、猛打で初優勝 パワー全開「池田の夏」

 四国の豪放な打棒が、全国三千四百六十六校の頂点をきわめた――。

 第六十四回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)の最終日は二十日、阪神甲子園球場に五万三千人の大観衆を集めて池田(徳島)―広島商(広島)の決勝戦が行われ、池田が投打に広島商を圧倒して、徳島県に初めて深紅の大優勝旗をもたらした。

 先攻の池田が一回、二死から2二塁打を含む6安打を放つ打者一巡の猛攻で一挙に6点を先取。六回には、畠山の2点本塁打など大会新の七連続安打で5点を加え、栄冠を不動のものとした。これに対し、広島商は三、六回にそれぞれ1点を挙げたが、後手後手に回り、試合巧者ぶりを十分発揮することが出来なかった。全員得点の池田は、今大会同チーム三度目の全員安打、チーム本塁打も七本に伸ばし、大会新をマークした。広島商は、過去五回の決勝戦でことごとく優勝したが、その伝統を継続できなかった。

 閉会式では、池田ナインとともに、準優勝の広島商にも温かい声援と拍手がスタンドからわきあがり、十四日間の熱闘の幕を閉じた。

■初回一巡 6回は7連打 18安打 すさまじい破壊力

 まさか、これほどの大差がつくとは思わなかった。確かに池田打線は強力だ。しかし、決勝という独特のムード、相手がここ一番になると力以上の試合をみせる古豪の広島商とあって、接戦を期待したが、そんなすべてを池田打線があっさり打ち砕いてしまった。

 池田の一気にたたみかけた一回の攻めはすさまじかった。それも簡単に二死を取られてからだ。江上以下が3連打して満塁とし、続く宮本はストレートの四球。これで早くも1点。こうなると池田は強い。山下の左中間二塁打と中堅手の悪送球が重なって走者を一掃、さらに木下、山口が長打短を浴びせ一挙6点を奪った。

 広島商の池本は、悪い立ち上がりではなかった。カーブを多投、トップの窪、二番多田を遊ゴロにうち取り、マウンド上でもおそらく「いけるぞ」と思ったろう。

 その投球が狂いだしたのは江上を2―2と追い込んだあと、真ん中のカーブを打たれてから。続いては畠山、水野にも甘いカーブを連打され、すっかり動揺してしまった。宮本を歩かせ、山下以下に3連打された時の投球は、いつものゆっくりタメをつくったモーションでなく、手先で投げ急ぐ池本らしくないものだった。このため、制球は乱れ、球の切れもなくなり、池田打線にねらい打たれた。

 二回から中盤にかけては外角へカーブをよく決めて池田打線をかわしたのをみると、得意のカーブを次々に打たれたことによる動揺としか思えない。とはいえ、相手投手の決め球をいとも簡単にねらい打ってみせた池田打線が一枚上で、改めてそのすごさを思い知らされた。そして池田は六回、再び二死から畠山の本塁打などで5点を加えて勝負を決めた。

 広島商にとっては一回の6失点がなんとしても痛い。しかし、反撃して池田を追いつめる好機はあった。それは先頭の久山が三塁打した二回だ。大差がついたといってもまだ序盤。池本が自分の投球を取り戻しつつあったので、小刻みにでも加点していけば池田の焦りを誘えたかも知れない。が、一死からのスクイズで久山が本塁で刺され、逆に守っては五回に遊撃手の悪送球で点を与えるなど、攻守に広島商らしくないミスが出てしまった。これが予想外の試合展開になったといえる。(田口)

■カーブ狙い打ちが突破口に

 なんと、すさまじい池田の打撃だろう。簡単に二死にはなったが、それからがすごい。

あっという間に満塁とし、四球をはさんでまた連打で一挙に6点。この間、わずかに十七分だったが、息もつかせぬ猛攻は五万三千人の観衆を驚きとため息に二分してしまった。

 終わってしまえば、池田の豪打だけが印象に残る。だが、池田に不安がなかったろうか。前日、中京が、池本の軟投に完封されたのを目のあたりにしている。ひとつ間違えば、中京の二の舞い――そんな重圧が戦いを前にしてなかったとは思えない。

 試合前の練習に、池田は鳴尾浜へ出かけた。せまい室内の練習では不安が消えなかったに違いない。そこでは広島商の池本投手に似た横手投げ投手を相手に約一時間の打ち込みをした。蔦監督は、ここで「打席では投手寄りに立て。ベースにかぶさってカーブをねらえ。強振せずミートしろ」と指示した。

 ところが、窪、多田の一、二番打者は池本のカーブをまじえた巧みな投球に、ともに遊ゴロ。試合は池本のペースで進みかけた。池田にとっては、いやなムードが漂いかけたところだった。

 この重苦しい雰囲気を打ち払ったのが江上の安打。スピードを殺したカーブに空振りして2―2となったが、5球目の真ん中から手元へ食い込むカーブをライナーで右前に打ち返した。蔦監督の指示通り、ミートを第一に考えた無理のないスイングをみせた。

 池田の攻めの特徴は、きっかけをつかむと一気に襲いかかることだ。続く畠山、水野はいずれも1―1からのカーブをたたきつけて三遊間を破り、宮本の四球で1点をあっさり奪った。

 ここで、蔦監督は次打者の山下に「直球ねらい」を指示した。池本の武器であるカーブを連打した。「もうカーブで勝負してこない」と読んだからだろう。このあたりはさすがにベテラン監督である。山下は1―2からの直球に詰まったが、左中間に二塁打して二人をかえし、さらに返球ミスで走者を一掃。

 この場面で池本が、カウントを取ろうとせず、得意のカーブか、あるいはシュートを投げていたらどうだったろう。山下はねらいが外れて内野ゴロを打たされたかもしれない。勝負に「たら」は許されないが、山下―池本の勝負が大勢を決めてしまったといえないだろうか。

 「6点でいっぺんに楽な気分になった」という山下。この言葉は池田の全員の気持ちだったことは間違いない。その後は、のびのびと打ち、走り、守って大差をつけたのだから。
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横浜商―PL学園(83年決勝)

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横浜商(神奈川) 000 000 000|0
PL学園(大阪) 010 000 11×|3

■パワーと好守 PLの夏

 第六十五回全国高校選手権記念大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)の最終日は二十一日、はや秋雲の浮かぶ阪神甲子園球場に超満員の五万八千人の大観衆を集め、横浜商(神奈川)―PL学園(大阪)の東西の強豪で決勝が行われ、PL学園がパワーあふれる打撃で横浜商を下し、第六十回大会に続き、五年ぶり二度目の優勝を果たした。

 試合は、横浜商・三浦、PL学園の一年生投手・桑田の投げ合いで幕を開けた。PL学園は二回、一年生の四番・清原が右超え本塁打で先制。七回には二塁打の小島を藤本が遊撃不規則バウンドの安打でかえし、八回にも加藤の本塁打で勝利を動かぬものとした。横浜商は序盤の再三の逸機が響き、七回途中から救援の藤本にも抑えられ完封負けを喫した。PL学園のチーム本塁打8は、昨年優勝の池田(徳島)の7本を抜く大会新。

 閉会式では、深紅の大優勝旗をしっかり掲げ持ったPL学園・朝山憲重主将を先頭に両校選手が場内を一周、PL学園とともに、準優勝の横浜商にもスタンドから惜しみない拍手が送られた。

■先制・とどめ強烈2発 意表つく完封リレー

 ◎…横浜商の三浦が打ち気を読んで巧みに打たせれば、PL学園の桑田は一年生らしからぬ落ち着きで低めをつき、試合は淡々と進んだ。他の選手も随所に好打、好守をみせて両投手をもり立て、見ごたえのある一戦となったが、効果的な2本塁打を放ったPL学園が看板の打力で勝利をものにした。

 しかし、PL学園は立ち上がり苦しかった。一回は安打で出た信賀に二、三盗を決められて一死三塁、二、三回には先頭打者に安打された。桑田は決勝とあってか慎重になりすぎて、肝心の勝負球にいまひとつ力がなかった。普通なら、いきなりかきまわされれば動揺するものだ。それなのに桑田はそんなそぶりもみせず、クリーンアップをうち取った。度胸のよさ、集中力、そして自信たっぷりの投球は、とても一年生とは思えない。このふんばりが、最終的にはPLに勝利をもたらした。

 先手はPLが取った。二回のピンチを切り抜けたその裏、先頭の清原が右へ打ち込んだ。2―2からの一投は、外角寄り高めにきた変化球。清原は右わきを締め、押し出すように振り抜いた。うまさと力がかみ合った見事な一打だった。

 この1点で中盤はPLが攻め、横浜商が守る展開になったが、七回に明暗を分ける一打が生まれた。PLが小島の二塁打などで二死二塁とした。住田四球のあと、藤本は遊ゴロ。これがイレギュラーして小島が生還。横浜商としては住田との勝負を避け、藤本も計算通りにうち取ったはずだった。不運とはいえ、誠に痛い失点だった。

 横浜商にとって惜しまれるのはやはり前半の拙攻だ。一回の一死三塁は高井が力んでカーブで三振、二回は一死二塁で中村が投手けん制に刺された。また三回は手堅く送ったが、後続がボールを打ってしまった。焦りは感じられなかったが、これまでの横浜商と比べると、いまひとつどっしりした攻撃が出来ていなかった。この序盤を生かしていれば、ペースにも乗れたし、もっともつれた競り合いになったろう。

■苦境にケロリ 一年生したたか

 「走者が出てからは、打たれる気がしなかった」。PL学園の一年生投手・桑田は優勝の決まった直後に、ちょっと奇妙なことばを口にした。顔つきは、けろりとしている。どうやら、興奮による勘違いではなさそう。胸のうちを聞いてみると、こうだった。

 先頭打者には、打たれそうな気もしていた、という。が、走者がいると、「二塁や三塁で封殺できる。だから、内野ゴロを打たせることだけを考えればよかった」と、桑田は話した。遊撃手の朝山主将ら守備陣への信頼感があればこそだが、それだけでは説明になるまい。

 事実、一回は一死から安打した信賀に、すぐさま二、三盗された。二、三回には、安打の先頭打者がバントで二進、五回には一死から四球を選んだ走者がやはりバントで二塁へ進んでいる。桑田のいうような封殺の場面は、見当たらないのだ。

 むしろ、ここは、桑田が「自分を落ち着かせるためにかけた自己暗示」と考えた方が自然だ。マウンド上で、心を「低め球で内野ゴロ」に集中させる。決して迷わない。走者を出すことが、投手にとって「苦境」なのは当然だが、それを逆手にとるしたたかさを、十五歳四カ月のこの少年は持ちあわせていた、ということだろう。七回途中から先輩・藤本の助けを借りたとはいえ、一年生の優勝投手誕生は戦後初めての快挙だ。三連投とあって、調子は必ずしもよくなかった、というが、思い切りのいい投球は相変わらずだった。

 さらに桑田は「試合前、横浜商の打撃練習を見たとき、迫力を全く感じなかった。第一、池田の選手とは体つきが違う」ともいっている。池田打線を完封した自信が、伸び盛りの少年をいっそうたくましくしていた、といってよさそうだ。

 その桑田をリードした三年生の小島は、大阪大会で一度代打出場があるだけ。甲子園へ来て正捕手が故障したため、公式戦で初めて桑田とコンビを組んだ。が、この背番号「12」は、この日も七回、追加点機をつくる二塁打と活躍、「11」の桑田をもり立てた。試合のあと、応援席へあいさつに走る途中、小島が桑田に駆け寄った。「よくやったぞ」「ハイッ」。長年、バッテリーを組んだ同士のような、えもいわれぬ「呼吸」があった。
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PL学園―高知商(78年決勝)

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高知商(高知)  002 000 000|2
PL学園(大阪) 000 000 003|3

■PL学園が初優勝 高知商に逆転サヨナラ

 参加三千七十四校。かつてないすそ野の広がりを見せた第六十回高校野球選手権記念大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)の決勝戦は二十日、阪神甲子園球場で行われ、大阪代表・PL学園が、前日の準決勝に続いて奇跡ともいえる逆転サヨナラ勝ちで3−2と高知代表・高知商を下し、初めて栄冠を獲得した。

■柳川、左中間を真っ二つ 西田、歓喜のホームイン

 二試合も続けて九回裏に、こんなドラマが起こると、だれが予想できたか。

 三回に2点を先行され、PL学園は高知商の森に「ゼロ」を重ねた。ベンチで鶴岡監督はナインに何度もどなった。「1点がどうして取れんのや。きのうのようなことは二度と起こらんぞ」

 だが、奇跡はまた起こったのである。今大会、前日まで10打数1安打の中村が突破口の中前打。幕開けにはまず意外性があった。

 森の顔が青ざめる。谷松に対して腕が絡みストライクが入らない。二宮主将がベンチから伝令に走った。リードを背負った投手は、九回裏になると、気持ちが攻めから守りに変わるといわれる。高知商ベンチはそれを心配して「これで終わると思うな。延長戦をやるつもりでいけ」とこの回、森を送り出していたが、投げる本人には無理な注文だったかも知れない。

 谷松ストレートの四球、渡辺のバントに森は立ちすくんだ。一塁手の松浦が拾って危うくアウトにしたが、この硬い動きにも森の不安は良く表れていた。前日、PL学園九回裏の逆襲に、中京の武藤投手は「代えて欲しい」とベンチを何度もうかがったが、森の心理も同じようなものだったろう。

 木戸の中犠飛で1点差としたあと、打席に入った西田は、森の弱気を読んでいた。「二年生でしょう。経験不足で硬くなってましたね」。1―1から西田は、とんでもない高いボールに手を出し空振りした。「何でもいいから、一つ思い切り振ってやろう」と、ヤマを張っての失敗だったが、不安いっぱいの森は、この強振に恐怖を感じたかもしれない。4球目は内角カーブ。森は「狙ったところへいった。失投とは思わない」といったが、西田にいわせると「左打者にあのカーブはボクもよく打たれる球」。これが同点の二塁打。

 このあと柳川の打球が左中間を真っ二つに割って、西田が両手をあげ本塁へ。森は柳川の一打を何か信じられないものを見るように、ぼう然と見送っていたが、マウンドを二歩、三歩降りると、しゃがみ込んでしまった。勝者から一気に敗者へ。残酷な場面だった。

 西田は四回、三直を打ったとき、球につまって左手の親指を痛めた。「気の強い子」(鶴岡監督)で、西田にはこの試合、明らかに気負いがあり、三回の失点は多分に力みが災いとなっていた。だが、親指を痛めたことで、投球を「打たせてとる」方向に変えた。これが高知商の追加点を阻むことになったのだから、野球は面白い。

 PL学園はこの試合、ジャンケンに勝って「後攻」をとった。木戸が“グー”で高知商の二宮は“チョキ”。鶴岡監督は「きのうの九回裏を考えて後攻をとらせたのではない」と苦笑したが、あとになってみると何もかもが「九回裏」のおぜん立てになっている。高知商はやはり運がなかった。

■優劣つけ難い両チーム

 八回まで3安打の散発に抑えられていたPL学園が、九回の土壇場で逆転。信じられないようなフィナーレになった。

高知商の森は、速球とカーブのコンディションがよく、PL学園・西田よりいい投球をしていた。球に勢いがあるし、カーブは両サイドをよぎる。さすがのPL打線もねらい球がしぼれず、森のペースにはまっていた。ところが、九回になって、中村に中前打され、急にピッチングがおかしくなった。

 谷松に四球、渡辺のバント、木戸の中犠飛と1点差に追い上げられ二死二塁。まだここまでは、高知商の勝利も可能性を十分秘めていた。西田を迎えて2―1と追い込み、四球目の内角カーブを、西田が力いっぱい引っ張った。球は一塁線を破る二塁打で同点。それまで三打席とも抑えている森にしてみれば、敬遠策も必要ではなかったかも知れない。ただ、勝負球は外角攻めの方がよかったように思う。悔いの残る一球であった。

 PL学園は勝ったが反省する点もあった。たとえば左投手の攻略法だ。左打者が四人という不利があるにしても、もっとドラッグバントを試みるとか、ヒット・エンド・ランでかき回すとかすれば、こんなに苦しまなくてすんだだろう。だが、準決勝の中京戦で4点をはね返した経験が自信になり、心の支えになっていた。勝負に対する執念は立派なものである。

 敗れはしたが、高知商もよくがんばった。三回の青木悟の巧打や、明神のすばらしい打撃。それに内野陣がよく鍛えられていることである。腰を低くしてすり足で打球の処理をする。一戦一戦うまくなったような気がする。勝利はPL学園のものになったが、力の差は優劣つけがたい。いずれにしても、決勝にふさわしい力の入った好ゲームで、六十回の年輪を象徴するような大一番であった。
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